2020年4月13日(月)

趣味のコラム

示準化石


「示準化石」というものがあります。

三葉虫やアンモナイトやマンモスなどに代表される、
年代を知る手掛かりとなる化石のことです。

基準となる条件として、

     今の時代には絶えていること、
     その時代にのみ広く分布していたこと、

    などです。

    それらが見つかったところは、
    同じ時代の地層ということがわかります。

    この示準化石となったモノたちは、
    急速に繁殖して広く分布したのですが、
    急速過ぎた故に生物学的に何かが破城して、
    全滅してしまったのでした。

     ・・・とまあ、ここまで、
    福岡伸一先生のエッセイ本そのままの受け売りなのですが、
    このあとに福岡先生は、

    「やがて人類も、示準化石になるのではないでしょうか」

    と、締めくくるのでした。


    この先生は、
    “動的平衡”という概念を唱えている有名な科学者です。

    動的平衡の本は、平易な文章で書かれてはいますが、
    少し真面目に読みこなさないと、
    本質はよくわからないかもしれません(私も)。

    福岡先生は科学者ですが、
    文学的情緒も持ってらっしゃるので、
    最後は“概念”での解説になってきます。


    (内容はこんな感じだったかと思います。)


    よって本職の科学の本は少し縁遠くなりがちなのですが、
    エッセイの本はとても楽しませてもらえます。
    諸行無常”“や方丈記の“川の流れは絶えずして”を根底にして、
    生物・生命の話、グルメやフェルメール、貧乏学生時代の話まで、
    いろいろとお話してくれます。

    常識的で二枚目で素敵な紳士という作家先生よりも、
    基本的な社会性をも持ち合わせたうえでのオタク系の先生の本は、
    読んでいて飽きません。


    話し戻して、

    人間の人口増加率のグラフをあらためて見ると、
    今現在、まさに逆L状態です。

    この先が、平和的解決なのか手荒な解決なのか、
    もしくは世紀の大発見なのかわかりませんが、
    いずれにせよどう考えても、このままとは思えません。


    それからもう一つの、
    示準化石の条件である“まんべんなく”というのも、
    人間にとてもよくあてはまります。

    衛星写真が隅々まで網羅したこの地上に、
    未開の地はなくなってしまいました。
    極限の熱帯の地と酷寒の地、どちらも住めるのは人間だけです。

    すると、福岡先生の言う通り、生物の中でまさに
    「人間が、未来の示準化石の最有力候補」
    というのが、現実味をおびてくるのでした。


    ちなみに、

    アンモナイトは4億年前から5000年前までの3億5000年間、

    三葉虫は5億年前から3億年前までの2億年間、

    マンモスは約400万年前から1万年前までの400万年間です。

    そして人類が地球上で歩き始めたのは20万年前、

    ギリシャ神話だエジプト文明なんてのは、5000年前の話です。

    そして地球の歴史は46億年。

    46億年と20万年と言われてピントきませんが、
    46億円にたいしての20万円とか5000円と言われれば、
    驚くほどつい最近のことだとわかります。
    この短期間に人類は、ずいぶん地球をひっかきまわしてしまいましたね。


    絶滅の危機というものを考慮するならば、
    政権交代とか経済の発展という話よりも、
    本能とか欲望とか、もっと人間の本質的な部分の話もあるでしょう。
    社会学者や経済学者も必要でしょうが、
    やはり生物学的見地からのご意見として、
    福岡先生を経済財政諮問会議のメンバーに推薦します。

    地球の寿命はあと半分くらい残っているといわれており、
    もし人類が死に絶え、その次の生物(なんなんでしょうか)に、
    人間の化石を発掘しながら「ここは今から何億年前の地層か」
    なんて思いをはせられるのかと思うと、
    きょうからワタシ、酒やめます。

    コロナ禍がこれらの話と絡まないよう祈りを込めて…


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