2022年3月24日(木)

お口の中を楽しくコラム

洗口剤の意義


1)洗口剤の効力

「洗口剤ってどうなんですか?」
という話を、先日患者さんとしていました。
リステリンとかモンダミンとか、
あれ何なんなんですかという、素朴な質問です。

洗口剤1


歯の健康を保つには、なんといっても歯磨き第一。

歯磨きは、「歯を磨く」という単語に惑わされて、
光り輝くように磨き上げれば、歯周病にも虫歯にもならないように思われがちですが、
あの白いばい菌(=歯垢)を、重箱の隅とならないようにふき取ることが目的です。

洗口剤2


ブラッシング指導では、歯垢を可視化するために、
特殊な赤インクを綿棒でポンポンポンと染め出して、
よーくお口をすすいでもらいます。
すると、ほらこの通り…

洗口剤3

…と、ここで、
先ほどの回答です。(前置きが長い)

力強く“ぶくぶく”をしてこの状態ですから、
歯垢というのは口をゆすいだだけではおちないというのが、おわかりでしょうか。

夜に眠いからといって、リステリンだけですますのは、
ほとんど意味ないことが理解できます。
ごしごしとたわしでこすり上げるかのように磨くのは厳禁ですが、
それでも粘着性があるのでちょっとは触らないと取れません。

洗口剤4


2)たいへんな細菌社会

いささか話は飛んで、

“細菌叢(そう)”という言葉がありまして、
口腔内や腸内には多くの種類の細菌がいて、
この細菌たちは、
微妙な勢力バランスで生活しています。

いい菌が勢力が張って悪い菌の繁殖を抑えていたり、
普段無害なのにあるとき突然悪い菌として活動したり、
人間の免疫能力が常にパトロールして取り締まっていたりとか、
水面下でさまざまなことが起きている中で、
人間の健康は保たれています。

洗口剤5


そこに、最近は、コロナ禍以降の、
やたらめったらのアルコール消毒。
人のからだは、
この微妙なパワーパランスでなんとか保っているところに、
さらに新たなる勢力が投入されて、
援軍が来たと喜んでいるのか、
それとも戸惑っているのでしょうか、
わかりません。


たとえば乳幼児の死亡率が100年前と比較して格段に良くなったのは、
衛生面の改善であるのは間違いのない事実です。
しかし一方では、たとえば解熱剤などはあまり使わずに、
人間が本来持つ能力で健康を回復させたらどうか
という意見も出てきました。

体に致命傷を与えないという前提ではありますが、
ある程度のストレスをかけたほうが
長い目で見たらそのほうが丈夫に有益ではないかということです。

洗口剤6


3)口の中の500種類もの細菌たち

そう考えて、口腔内の細菌の話に戻してみますと、
歯ブラシもしなくていいような気もするのですが、

これがダメなんです。

歯の健康を保つためには、
歯ブラシで物理的に、
この細菌軍団をまとめて洗い流すことは欠かせません。


なぜならば、
今の食物の成り立ちはここ100年の話で、
砂糖の量だったり柔らかいもに急激に変化して、
食事の変化に体が追い付いていないからです。
このまま1000年もたてばどうなっているかわかりませんが、
今日明日の話では、
歯を歯ブラシでこすり続けなければなりません。


洗口剤で細菌を洗い流すことはできないのは
先に述べたとおりですが、
それでも、
細菌増加のスピードの抑制
には効果があります。

どんなに一生懸命にやっても
歯ブラシで細菌を0にすることはできなくて、
だから、食後2時間もすると
増殖して元の木阿弥になってしまうのですが、
そこに洗口剤を使うことによって、
細菌の復活の抑制にはなります。

でも早々に歯ブラシすれば、

まあいいか・・・

結局、
洗口剤の目的として、一番の効能は、

 「さっぱりする」ことすかね。

洗口剤7


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