1)洗口剤の効力
「洗口剤ってどうなんですか?」
という話を、先日患者さんとしていました。
リステリンとかモンダミンとか、
あれ何なんなんですかという、素朴な質問です。
歯の健康を保つには、なんといっても歯磨き第一。
歯磨きは、「歯を磨く」という単語に惑わされて、
光り輝くように磨き上げれば、歯周病にも虫歯にもならないように思われがちですが、
あの白いばい菌(=歯垢)を、重箱の隅とならないようにふき取ることが目的です。
ブラッシング指導では、歯垢を可視化するために、
特殊な赤インクを綿棒でポンポンポンと染め出して、
よーくお口をすすいでもらいます。
すると、ほらこの通り…
…と、ここで、
先ほどの回答です。(前置きが長い)
力強く“ぶくぶく”をしてこの状態ですから、
歯垢というのは口をゆすいだだけではおちないというのが、おわかりでしょうか。
夜に眠いからといって、リステリンだけですますのは、
ほとんど意味ないことが理解できます。
ごしごしとたわしでこすり上げるかのように磨くのは厳禁ですが、
それでも粘着性があるのでちょっとは触らないと取れません。
2)たいへんな細菌社会
いささか話は飛んで、
“細菌叢(そう)”という言葉がありまして、
口腔内や腸内には多くの種類の細菌がいて、
この細菌たちは、
微妙な勢力バランスで生活しています。
いい菌が勢力が張って悪い菌の繁殖を抑えていたり、
普段無害なのにあるとき突然悪い菌として活動したり、
人間の免疫能力が常にパトロールして取り締まっていたりとか、
水面下でさまざまなことが起きている中で、
人間の健康は保たれています。
そこに、最近は、コロナ禍以降の、
やたらめったらのアルコール消毒。
人のからだは、
この微妙なパワーパランスでなんとか保っているところに、
さらに新たなる勢力が投入されて、
援軍が来たと喜んでいるのか、
それとも戸惑っているのでしょうか、
わかりません。
・
たとえば乳幼児の死亡率が100年前と比較して格段に良くなったのは、
衛生面の改善であるのは間違いのない事実です。
しかし一方では、たとえば解熱剤などはあまり使わずに、
人間が本来持つ能力で健康を回復させたらどうか
という意見も出てきました。
体に致命傷を与えないという前提ではありますが、
ある程度のストレスをかけたほうが
長い目で見たらそのほうが丈夫に有益ではないかということです。
3)口の中の500種類もの細菌たち
そう考えて、口腔内の細菌の話に戻してみますと、
歯ブラシもしなくていいような気もするのですが、
これがダメなんです。
歯の健康を保つためには、
歯ブラシで物理的に、
この細菌軍団をまとめて洗い流すことは欠かせません。
・
なぜならば、
今の食物の成り立ちはここ100年の話で、
砂糖の量だったり柔らかいもに急激に変化して、
食事の変化に体が追い付いていないからです。
このまま1000年もたてばどうなっているかわかりませんが、
今日明日の話では、
歯を歯ブラシでこすり続けなければなりません。
洗口剤で細菌を洗い流すことはできないのは
先に述べたとおりですが、
それでも、
細菌増加のスピードの抑制
には効果があります。
どんなに一生懸命にやっても
歯ブラシで細菌を0にすることはできなくて、
だから、食後2時間もすると
増殖して元の木阿弥になってしまうのですが、
そこに洗口剤を使うことによって、
細菌の復活の抑制にはなります。
でも早々に歯ブラシすれば、
まあいいか・・・
結局、
洗口剤の目的として、一番の効能は、
「さっぱりする!」ことすかね。
