2022年7月19日(火)

読んだ本の話

素人写真からの考察

職人技術だった写真

フイルムで写真を撮るという行為は、職人技を必要としていました。当時の写真は大変難しいもので、機械の調整と薬品の配合、関連なさそうなこの二つの技術をあわせ持っての、一枚の写真ですからね。
プロと素人の間にはとてつもない壁が立ちはだかっていました。

そして今デジタルカメラになって、写真を撮るという行為はボタンひとつ、映像化するという行為もボタンひとつ、さらにあとからの変更も造作ない作業となりました。

あんなに難しかったことがこんなに簡単にできるようになったということで、みんなやったほうがいいです(笑。

素人写真1

素人写真というアート

戦地とか断崖絶壁の山頂とか極限の地とか報道しか入れないエリアとか、プロの写真家しか行けない所にプロ写真というものが存在します。
一方、日常の中で、納期や利益なく気楽に撮るといったところに、素人の写真アートというものが存在します。

素人の写真とは、
・ちょっとした行動力、
・その場面に遭遇するというタイミング、
・それを察知する能力、
そんなアートです。
アクシデントに遭遇というほどの大げさなモノでなく、近所の神社でハトが三匹一直線並んでこっち向いた瞬間、そんなもので素敵なアートとなります。

素人写真2

そしてひとつのコツとして、そこにいる私にしか撮れない写真を撮ることです。

例えば東京タワーを撮るとしたときに、東京タワーだけしか写っていないと、誰でも撮れる写真となってしまいます。そこで、空にある雲とか、たまたま前を通りがかった車とか、小さなリックを背負ったかわいい女の子の後ろ姿とか、それらを一緒に写すようにすると、“私の遭遇した一場面”という個人の作品になるのです。

素人写真3

そして撮った写真。

実家の押入れを片付けているときに出てきた古ぼけた一枚の写真。ピントだの構図だの色彩だのは二の次三の次。そのぼやけた写真一枚で、あの時の記憶がよみがえり、時間を忘れていつまでも楽しむことができます。これは、我ら世代の至極のひと時ですね。

素人写真4

今の若者たち、写真は今現在たくさんあって、この先もいくらでも増えていくことでしょう。30年後に、経時的変化のない写真が無尽蔵にある彼ら彼女たちは、果たしてこんな想いができるのでしょうね、少しかわいそうな気もします。

素人写真5

デジタルで撮った写真を後でまた楽しむのならば、必ず選択してから保存しておくことです。
実は、撮るという行為に対して、消すというエネルギーはかなり大きい。写真を消そうと“えいっ”とボタンを押すのは意外と大変。
そもそもどうしても消さなきゃいけないという切実感がないので、迷いながらがやっていると、だんだん億劫になってきます。「まあいいか」。

しかし選択して残しておかないと最後は、ひっくるめてすべてがゴミと化します。
テレビ番組の“汚い部屋かたづけます”の講師の先生は、「これどうしようかなと思ったものはすべてゴミです」と言い切って言っていましたね。写真もちょっとでも迷ったらそれらはすべて、消去しときましょう(断言!)

素人写真6

写真データを実本写真に

写真も、100枚もアルバムに貼るとそれなりの重量となり、ばんたび見返すには少し億劫に感じます。
かといって1000枚入った記録媒体も、パソコンでいつでも見られるという気楽さで、これまた逆に意外と見なかったりします。
(人間はどこに向かっているのでしょうかね)

素人写真7

そこでその折衷案として、デジタル写真を本にしてもらうという方法があります。これが結構おススメ。この作業がこれまた楽しい。製作は全部、パソコンとネットで行います。

まずは製本にしてくれるお店屋さんをひとつ選んで(フォトブック比較サイトなんてのもあります)、次にそのショップのいくつもあるサンプルの中から、本の大きさやデザインを決めます。一枚一枚の写真を大きく並べてゆっくりと思いをはせるタイプとか、旅の記録写真集として小さな写真を経時的に並べていくとか、様々です。あれやこれやいろいろと、ぐずぐず悩んで楽しみます。
載せる写真の選択も、どれにしようかなと目的をもって一枚一枚を見返すとなると、先ほども言った取捨選択の楽しい苦痛が身に染みてくる(笑。

老後になって、1000枚もの写真をボタン一つでちゃかちゃか見ているよりも、一冊の本を手に取ってゆっくりページをめくって眺めていくほうが、おそらく感動は大きいでしょう。おすすめです。
(たまに割引セールが始まって、のんびりやってたのが急にあわてたりして、これまた笑えます。)

素人写真8


素人写真9

(100均ショップの花3本とガラス瓶、総製作費440円。日本全国、全く同じもの売ってます。青いティッシュは歯科用紙エプロン)

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