「示準化石」というものがあります。
三葉虫やアンモナイトやマンモスなどに代表される、
年代を知る手掛かりとなる化石のことです。
基準となる条件として、
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今の時代には絶えていること、
その時代にのみ広く分布していたこと、
などです。
それらが見つかったところは、
同じ時代の地層ということがわかります。
この示準化石となったモノたちは、
急速に繁殖して広く分布したのですが、
急速過ぎた故に生物学的に何かが破城して、
全滅してしまったのでした。
・・・とまあ、ここまで、
福岡伸一先生のエッセイ本そのままの受け売りなのですが、
このあとに福岡先生は、
「やがて人類も、示準化石になるのではないでしょうか」
と、締めくくるのでした。
この先生は、
“動的平衡”という概念を唱えている有名な科学者です。
動的平衡の本は、平易な文章で書かれてはいますが、
少し真面目に読みこなさないと、
本質はよくわからないかもしれません(私も)。
福岡先生は科学者ですが、
文学的情緒も持ってらっしゃるので、
最後は“概念”での解説になってきます。
(内容はこんな感じだったかと思います。)
よって本職の科学の本は少し縁遠くなりがちなのですが、
エッセイの本はとても楽しませてもらえます。
諸行無常”“や方丈記の“川の流れは絶えずして”を根底にして、
生物・生命の話、グルメやフェルメール、貧乏学生時代の話まで、
いろいろとお話してくれます。
常識的で二枚目で素敵な紳士という作家先生よりも、
基本的な社会性をも持ち合わせたうえでのオタク系の先生の本は、
読んでいて飽きません。
話し戻して、
人間の人口増加率のグラフをあらためて見ると、
今現在、まさに逆L状態です。
この先が、平和的解決なのか手荒な解決なのか、
もしくは世紀の大発見なのかわかりませんが、
いずれにせよどう考えても、このままとは思えません。
それからもう一つの、
示準化石の条件である“まんべんなく”というのも、
人間にとてもよくあてはまります。
衛星写真が隅々まで網羅したこの地上に、
未開の地はなくなってしまいました。
極限の熱帯の地と酷寒の地、どちらも住めるのは人間だけです。
すると、福岡先生の言う通り、生物の中でまさに
「人間が、未来の示準化石の最有力候補」
というのが、現実味をおびてくるのでした。
ちなみに、
アンモナイトは4億年前から5000年前までの3億5000年間、
三葉虫は5億年前から3億年前までの2億年間、
マンモスは約400万年前から1万年前までの400万年間です。
そして人類が地球上で歩き始めたのは20万年前、
ギリシャ神話だエジプト文明なんてのは、5000年前の話です。
そして地球の歴史は46億年。
46億年と20万年と言われてピントきませんが、
46億円にたいしての20万円とか5000円と言われれば、
驚くほどつい最近のことだとわかります。
この短期間に人類は、ずいぶん地球をひっかきまわしてしまいましたね。
絶滅の危機というものを考慮するならば、
政権交代とか経済の発展という話よりも、
本能とか欲望とか、もっと人間の本質的な部分の話もあるでしょう。
社会学者や経済学者も必要でしょうが、
やはり生物学的見地からのご意見として、
福岡先生を経済財政諮問会議のメンバーに推薦します。
地球の寿命はあと半分くらい残っているといわれており、
もし人類が死に絶え、その次の生物(なんなんでしょうか)に、
人間の化石を発掘しながら「ここは今から何億年前の地層か」
なんて思いをはせられるのかと思うと、
きょうからワタシ、酒やめます。
コロナ禍がこれらの話と絡まないよう祈りを込めて…
