2021年8月3日(火)

趣味のコラム

自尊心


●自尊心って

“自尊心”という言葉。

普段ひょっと文章の中に出てきたとき、
とっさに端的に理解できない言葉でした。
“プライド”という言葉と似ていますが、
ポジティブとネガティブとで、使われる場面が違います。
プライドは高い、自尊心は低いで、
使われる場合が多いような気がします。

ネットで検索しようとすると、
カウンセラーとかメンタルクリニックとか宗教がらみの、
中身すっからかんの単語の羅列ページが、
あとからあとからでてきます。

「あなたは自分を大切にしていますか?」
「こちらにお電話を」

そこいらへんはスルー。


そして先日、端的に説明してくれた本がありました。

 「自分は愛される価値があると思える能力」
この一文で、今までのモヤモヤがかなり晴れてきたのでした。

 “能力”という言葉もキーワードで、
自尊心とは、あるかないかでなく、
強弱があるものだということでさらにしっくりきたのでした。
能力とは、自分で磨きをかけられるものでもあります。


●必要な能力

自尊心というのは、
人間が群れを成し社会を送っていくのに必要な、
基本的能力のひとつ。
人格形成の時期、もの心つくあの時に、
ちょっと大人から優しく声をかけてもらえていれば
容易に身につく、普通の能力です。

しかしその時、家の中が少しバタバタとしていて、
育てているほうがそこまで気がいかないときがある。
するとそこで育った子供が、
この能力がうまく身につけられないまま、
大人になっていくときがあるのです。
(決して少なくない割合で)


●OSソフトにバグはつきもの

パソコンのOSのウィンドウズは、
数えきれないほどの約束事が、複雑に絡み合ってできています。
さらに、その後にさまざまな、学習事が無限に付け加えられていって、
今では、二度と同じようには組み立てられないほどの
巨大なジェンガのようになって、
そして日常をすました顔で、普通にこなしているものです。

しかしあるとき、
それほど難儀なこととも思えないちょっとしたことをしようとしたとき、
このOSの成長過程ともいえる初期の制作段階で、
ひとつの約束事を入れ忘れたがために、
たまに面倒な事柄が、大ごととして表に出てしまうことがある。

自尊心も、
人間の成長の初期にちょっと入れとけばなんでもなかったということと、
大人になってからいまさらのちょっと修正がかなり大変だなというところで、
このOSのバグとイメージがダブるのです。

自尊心の低い人は、世の中を渡っていくにあたって、
意外と苦労をしている。
人生においてたびたび、めんどくさい手間を
かなりの労力を使って乗り越える場面に遭遇しているのでした。


●バグの修正を試みる

人生を俯瞰してみれば、自尊心の不足とは、
人格の中のちょっとしたソフトのバグでしかありません。
そしてそれは、地位や富との直接的な関連はありません。

実社会で、大きなものが建てられたとしても、
基礎の部分に一本の抜けがあって、心の中は常に不安だったり、
逆に、基礎がしっかりあるけれどもその上に
それほど大きなものが建たなかった人生だとしても、
なんか楽しそう、とか、
ベクトルは違った向きで、延びたり縮んだりしています。


それでも、もし何か気になったのならば、
自尊心とは、その人格のかなり根源の部分にあるので、
無意識下に置いとくとそのまま埋もれたままになってしまいがちで、
意識して表層までもってきて、能力UPを試みることも可能だと思います。

無責任なネットなんかで、人間の根源の解決なんかできるもんかと
最初に悪口を言ったばかりなのですが、
問題を提議するきっかけくらいには なります。
問題がみつかれば、あとは自分で探索していきましょう。


そしてもうひとつのヒントとして、
誰もが持っている人格のいろんなバグを、
苦労していちいち修正しようとはせずに、
なるべくそこが表に出てこない日常を模索するという方法もありますよ、
なんて軽口も付け加えておきます。
そんな方法もあるのかなと、トータルで楽な方法を模索してみましょう。

沖縄から貧困がなくならい本当の理由」(光文社新書)
          樋口耕太郎著

沖縄県人からしたら耳が痛いことを、愛情持って熱血で語っている本。
この自尊心の話はその中のいち部分。


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